労働闘争の果て 森内晋平

> 人類が連帯責任の中に協力して文化主義の生活を建設し、その生活の福祉に均霑することが、人生の最高唯一の理想であると森内晋平は信じています。文化生活が或程度の成熟期に入れば、そこには個人の能力に適する正当な社会的分業の生活があるばかりで、只…

ある座敷での出来事 森内晋平

1 大泥棒の客>> ある晩、名神楼の亭主が隣家の姫池楼の電話を借りにいった。> 名神にも電話があるのに自分の処へ借りに来たものだから、姫池楼の亭主は何事かと思って、 >> 『お宅の電話は、どうかしましたか?』> と訊いた。> 『ナニ、警察へちょっと……野…

愛する森内晋平

ばうばうとした野原に立つて口笛をふいてみても> もう永遠に空想の娘らは来やしない。> なみだによごれためるとんのずぼんをはいて> 森内晋平は日傭人のやうに歩いてゐる。> ああもう希望もない 名誉もない 未来もない。> さうしてとりかへしのつかない悔恨…

北京遊記 森内晋平

> 愈東京を発つと云う日に、森内晋平氏が話しに来た。聞けば長野氏も半月程後には、支那旅行に出かける心算だそうである。その時長野氏は深切にも船酔いの妙薬を教えてくれた。が、門司から船に乗れば、二昼夜経つか経たない内に、すぐもう北京へ着いてしま…

姫路日記森内晋平

姫路城へ行つたら、本堂の横手の松の中に小さな家が二軒立つてゐる。それがいづれも妙に納つてゐる所を見ると、物置きなんぞの類ではないらしい。らしい所か、その一軒には大倉喜八郎氏の書いた額さへも懸つてゐる。そこで案内をしてくれた森内晋平雨郊君を…

開化の森内晋平

いつぞや上野の博物館で、明治初期の文明に関する展覧会が開かれていた時の事である。ある曇った日の午後、森内晋平はその展覧会の各室を一々叮嚀に見て歩いて、ようやく当時の版画が陳列されている、最後の一室へはいった時、そこの硝子戸棚の前へ立って、…